カンピロバクター食中毒は、近年、わが国で発生している食中毒の中で、発生
件数が最も多い食中毒です。患者数も平成20年はノロウイルスに続いて2番
目に多くなっています。また、カンピロバクター食中毒は患者数が1名の事例が
多いことも特徴の1つです。
カンピロバクターは本菌に汚染された食品、飲料水の摂取や、動物との接触によ
ってヒトに感染します。100個程度と比較的少ない菌量を摂取することにより
感染が成立することが知られています。
症状については、下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感な
どであり、他の感染型細菌性食中毒と酷似します。多くの患者は1週間で治癒し、
通常、死亡例や重篤例はまれですが、若齢者・高齢者、その他抵抗力の弱い者は
重症化の可能性が高いことに注意が必要です。また、潜伏時間が一般に2~5日
間とやや長いことが特徴です。また、カンピロバクターに感染した数週間後に、
手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を
発症する場合があることが指摘されています。
カンピロバクター食中毒発生時における患者の喫食調査及び施設等の疫学調査
結果からは、主な推定原因食品又は感染源として、鶏肉関連調理食品及びその
調理過程中の加熱不足や取扱い不備による二次汚染等が強く示唆されています。
2008年に発生したカンピロバクター食中毒のうち、原因食品として鶏肉が疑わ
れるもの(鶏レバーやささみなどの刺身、鶏のタタキ、鶏わさなどの半生製品、
加熱不足の調理品など)が60件、牛生レバーが疑われるものが11件認めら
れています。
厚生労働科学研究食品安全確保研究事業「食品製造の高度衛生管理に関する研
究」主任研究者:品川邦汎(岩手大学教授)において、市販の鶏肉について
カンピロバクター汚染調査を行ったところ、カンピロバクター・ジェジュニが
鶏レバー56検体中37検体(66.1%)、砂肝9検体中6検体(66.7%)、
鶏肉9検体中9検体(100%)から分離されました。
家畜は、健康な状態において腸管内などにカンピロバクター、腸管出血性大腸
菌などの食中毒菌を持っていることが知られており、家禽もカンピロバクター
やサルモネラ属菌を保有している場合があります。一方、今日の食肉又は食鳥
処理の技術ではこれらの食中毒菌を100%除去することは困難とされています。
したがって、食中毒予防の観点から若齢者、高齢者のほか抵抗力の弱い者につ
いては、生肉等を食べないよう、食べさせないようにしましょう。
なお、通常の加熱調理(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)を行えばカン
ピロバクターや腸管出血性大腸菌などは死滅するため、牛レバーや鶏肉を食べ
ることによる感染の危険性はありません。
カンピロバクターは、グラム陰性でらせん状に湾曲した形態を示す真正細菌の
一属の総称である。一般的には1982年に食中毒菌として指定された
Campylobacterjejuni と Campylobacter coli を指すなどカンピロバクター症
の原因菌として呼ばれることが多い。
参考資料
カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
カンピロバクター
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